国民の生活が豊かで、安全は欧州大陸随一、世界中の金持ちが退職後に住んでみたいと思れているスイスのなかでも、欧米の雑誌などで「世界の住みやすい街」の統計、世界中の
350の都市を対象にした「暮らしの質」の統計で、常に上位を占めるジュネーブやチーリッヒ
のタクシー視察結果を報告する。
今回スイスを選んだのは「法人タクシーと個人タクシーが折衷している事業形態」
を見に成功させていること、先進的な交通政策などを勉強するためである。
スイスは九州とほぼ同程度の面積人口約730万人が住み、うち2割は外国人。4つの公式言
語が話されている。中・東部のドイツ語約65%、西部のフランス語19%、南部のイタリア語
8%、山岳地帯のロマンシュ語1%。最近では英語の勢力が増してきている。学校教育に導入
されたほか、職場での利用も1990年には15.9%だったのが2000年には21.7%と、5人に1人が
英語を使うようになっている。数年前から保護に力を入れられてきたロマンシュ語は、残念
ながらその甲斐もなく衰えを見せている。面積は日本の九州とほぼ同じ。正式国名は
「コンフェデラチオ・ヘルヴェティカ」と言うラテン語で、略称の「CH」は、車のナンバー
プレート他、通貨や切手に使用。
国際都市ジュネーブのタクシー
コアントラン空港のタクシー乗場には、日本ほどではないがタクシーの列が続いており、
紺やプラチナ色のドイツ車が目立つ。運転手は皆私服で、車のエンジンを切って、車外で
仲間と話す者が多く見かけられた。空港から西へ約6kmの市街地まではバスで2スイス・
フラン(※以降CHF、1 CHFは100円。日本円に換算しやすいので以降円換算は省略)
市街地までタクシーで向かえば、約30 CHFとチップ。定額料金はない。
スイス国鉄も空港に直結するという便利さだが、我々はバスで市の中心部へ。
市内観光をしようと思い、いくつかのタクシー会社に問い合わせてみる。ジュネーブ市内
には10のタクシー会社があり、スイス全土にはおよそ100のタクシー会社がある。
「日本人のタクシー運転手はいますか?」「定額料金での観光は?」などと聞きながら、
最終的に個人タクシーのミカエルさんに出会った。デンマーク人の運転手で奥さんが日本人、
フランス語はもちろん、ドイツ語、英語を話す。200近い国際機関が集まる国際都市
ジュネーブでは多国語を話すことが仕事に大いに役に立つ。奥さんと日本語で話せば、
日本語も話せるようになるかも。
8人乗りの大型ベンツのディーゼル車で市内の名所巡りを開始。ジュネーブに限らず、
スイス全土にはバス・タクシー専用レーンが完備されており、快適な走行が可能。
他の国と異なり、通行制限は遵守されているとのこと。ジュネーブ市当局が設定する
タクシー料金は、初乗り6.3 CHF、加算1kmごとに2.9 CHF。
初乗り6.3 CHFはスイスではタバコ1箱の値段。マクドナルドでは10 CHF以下のメニュー
のほうが少ない。ミカエル運転手の話によると、法人タクシーで運転手として働きながら、
個人営業認可取得まで6年待ったという。氏はタクシー業だけで年間600万円近くを稼ぐ
高所得者。これだけ稼ぐことができると皆タクシー業を目指すが、免許を取得するのに複数
の語学試験などかなり難しい条件をクリアしなければならない。法人タクシー乗務員の資格
は日本と同じで2種免許のみ。料金体系や事業者関連事項は、後に登場するチューリッヒで
詳しく述べる。
ヨーロッパ最大の湖、レマン湖上の大噴水(ジェッドー)、同市のシンボルに到着。
140mの高さまで湖水を噴き上げるために1,360馬力のモーター2個を使う。その後も市内に
点在する洗練された公園など、駆け足で1時間あまりの小旅行、メーター料金134 CHFに
チップを加えて150 CHFを支払った。チップは強制ではないが料金の1割程度で充分。
公共交通機関を完全無料にする日を設けたり、市街地での車両乗り入れ禁止、
パークアンドライドの中継パーキングの無料化、公共交通機関の乗車券提示による各施設や
スーパーでの割引など、渋滞緩和政策では日本が大いに見習うべきところがあるジュネーブ
だが、残念ながら、限られた時間ではそれらを調査することはできなかった。
「闇のあとに光りあり」という標語を掲げる美しい街、どこを見渡しても絵になる街、
ジュネーブから我々は隣国フランスへと向かう。
アルペンリゾートの電気自動車タクシー
高速A40に乗りシャモニーに向かっておよそ100キロ。2車線でとても走り易い。
郊外を抜けると、変化のある山並みが始まり、谷間の道は次々に景色が変わって、快適な
ドライブコースが始まる。国境を越える前に、スイスで発行された地図を購入。精密工業の
国スイスの地図は見やすく繊細である。シャモニーという地名は知らなくとも、ヨーロッパ
大陸最高峰モンブランはとても有名。シャモニーはそのモンブランへの登山基地として発展
した街である。街は車やバス、タクシーが行き交い活気がある。ロープウェイを乗り継ぎ、
標高3842mの展望台へ。そこから見上げるのは標高4807mのモンブラン。
大迫力で圧倒される。その後、バスと電車を乗り継いで、アルプスの女王山脈マッターホルンの玄関ツェルマットに到着。静かな環境と清らかな空気、のどかで美しい山村で休憩する。
この村での移動手段は馬車ではなく、何と電気自動車タクシー。最大で7名ぐらいは乗車
可能だが座席がとても狭いので乗り心地は良くない。座席ではなく荷物置場のスペースの方
が広い。箱型のこの乗り合いジャンボタクシーはおもちゃのような外見であるが、
この村では唯一にして最も速い移動手段である。各タクシーは営業範囲を持っており、
3つのゾーンで定額料金を設定している。メーターはなく、人数、荷物の有無、行き先に
応じて料金が決まるので、仮に多人数で①という最も短い区間を運行した場合が1人当たり
の料金が最も安い(約12 CHF /人)。1人で③という最長区間を運行した場合は33 CHFの
最も高い料金となる。
この村ではガソリン・ディーゼル車ともに乗り入れが厳しく禁じられている。
事前に調べていた我々は電車で村へ入ったが、もしガソリン車で来てしまうとかなり手前
から、きっちりと進入規制の網にひっかかる。ちなみに電気自動車は1台約1千万円もする
らしいが、観光・登山・スキー客相手にタクシーとして元が取れるのだろうか。
旅行雑誌などによく登場するマッターホルンを初めとして、数日間はゆっくりとスイスの
360°パノラマを堪能する。天気が悪いと、いくらいい景色を見ても気が重くなってくるが、
この日も含め毎日晴天続きだ。
アルプスの真ん中に開けた草原にぽつんとできたようなアンデルマットという村を通り、
スイスのほぼ中心部、2つの湖の間に位置するインターラーケンへ。かつてはアルプスの中心
として颯爽たる風格を持っていたが、今では安っぽい遊園地のような建物に沿って多くの
観光馬車が走る。街のいたるところに車両規制の標識がある。中には犬の散歩まで禁じて
いるものもある。
バスターミナルにて黄色の「郵便バス」を見かけた。スイスの郵便バスが郵便物だけでなく
乗客も載せるのは郵便馬車のなごり。スイス国鉄とならび、時間に正確で、確かな交通手段
という評価が定まっており、路線は750、運行総延長距離は今や1万キロメートルを超え
る。バスは2000台を数え、年間で延べ1億人を上回る乗客を運ぶ産業に成長している。
2006年7月、国営のスイスポストはバス事業を切り離し、郵便バスは株式会社として新たな
百年の一歩を踏み出した。「企業の買収や事業提携などが容易になり、コスト削減による
競争力向上もめざしやすい」ということか。日本では2007年に日本郵政株式会社が設立され
るが、郵便民営化の世界的な流れの中にあって、全国津々浦々に郵便サービスを提供すると
いう難事業へのスイスの回答と言える。
登山列車を乗り継ぎ、ヨーロッパ最高地点の鉄道駅(標高3454m)、ローヌ氷河を一望
できる場所に到達した。これまで、我々がアルプスを移動してきた登山列車ともいよいよ
お別れ。険しい山々がそびえる国で、これほど密度の濃い鉄道網が敷かれているとは思わ
なかった。氷河急行、ベルニナ急行、ゴールデンパス、数多くの登山列車いずれも日本の
ローカル線より利用客が多いのでは?と思う。外国人観光客の日本人の割合は30%を超える
らしい。鉄橋や、トンネル、変化に富んだ山々の美しい車窓風景に興味のある方は、GGB
(ゴルナーグラート・モンテローザ鉄道)、PB(ピラトゥス鉄道)、BRB(ブリエンツ
・ロートホルン鉄道)、JB(ユングフラウ鉄道),RB(リギ鉄道)などのキーワードで
検索をかけると詳細を見ることができる。
バスで曲がりくねった険しい峠を越える。転倒防止の側壁や支柱は一切無い。女性運転手の
ハンドルさばきに我々一行の人命が委ねられる。よりによって1車線のトンネル内でエンジン
が故障し、寒いアルプス山脈に取り残されそうになりながら、ルツェルンという街に到着。
スイスといえば5000kmを超える路線、世界一の鉄道王国。鉄道に乗れば乗るほどタクシーの
調査がおろそかになるうえに、電車内は世界一高い物価の国の中でも、最も物が高い場所の
一つ。
ルツェルンではトラムに乗って中世の面影を残す旧市街、鉄道好きにはたまらない欧州一の
交通博物館、有名な橋、記念碑などを見学。流しのタクシーはなく、駅の前や広場などにあ
るタクシー乗場から乗るか、ホテルやカフェで個人タクシーを呼んでもらう。また、予約し
たタクシーは、指定時間に指定場所にくるだけで、運転手がわざわざ知らせにくることは
通常ないため、通りに出て待つ必要がある。
小説「ハイジ」の舞台、マイエンフェルトでは、見慣れ始めた牧歌的な景色の
クライマックスとなった。タクシーは1台たりとも存在しない。
パスポートコントロールは無く、アルプスに囲まれた公国リヒテンシュタインに入る。
オーストリアから入国する場合は検問所があるらしい。小豆島と同じ面積。
外交等をスイスに委任しており、通貨や電話などはスイスと共通。一般の国民には直接税が
無い。歩行者専用道路が多く、車両は曜日や時間によって規制される。
余談になるが国境に関して。EUに加盟しないスイスは、これまで要求されていなかった
税金を突然課税されたり、急に国境検査が強化されてあちこちの国境で渋滞が発生したり
している。スイスからドイツへ、あるいはドイツからスイスへ働きに行っている人々、
あるいは週末などスイスからの買い物客(ドイツの物価はスイスよりも安い)は国境通過に
何十分もかかり、顔見知りの検査官にわざわざパスポートを見せ、通勤時間等に多大な時間
をかけなければならないことに怒りや呆れの声を大きくしている。
Zurich
チューリッヒ最大のタクシー会社へ公式訪問
いよいよ、今回現地タクシーでの取材許可を頂いたチューリッヒのタクシー会社
「TAXI 444」へ。この444という覚えやすい会社の名前は同社の電話番号だけでなく、
無線配車センター協同組合、タクシー協会など各組織全体の名前にも使われている。
出迎えてくれたのは、「この道40年のMr. TAXI 」Remo Santi(以降サンティ氏)。
サンティ氏の組織・役職・職務内容は関協の理事長に等しい。これまで感じたスイスでの
タクシーの印象や日本のタクシーの話から始まり、3時間以上に及んだ話を要約する。
数値などは各会社によって異なるものもあるが、氏にはそれらも踏まえた上での業界平均値
を教えてもらう。
⑴ ロード・プライシングについて
馬車に代わってタクシーが登場したのは1907年、日本とほぼ同時期。
北欧で実施されている都市や観光地の環境保全を目的とした道路利用課金(ロード・
プライシング)、又は都市乗り入れ課金(アーバン・プライシング)はまだ話題になった
ばかりであるが、タクシー会社としては明日にでも導入してほしい。スイスは欧州規格
(パッシプ通信方式)のETCを導入実施している。過去に何回か、試験的に日曜日の
マイカー進入規制をしたら、タクシーの売り上げが大幅に上がったとのこと。日本で
普及しつつあるカーシェアリング(会員制レンタカー共同利用)なども先進している
スイスが手本となっている。
⑵ タクシー台数、総量規制について
人口37万人のチューリッヒのタクシー台数は1350台、空港専用が120台。そのうち400台
の法人・個人タクシーを見事に組織化したのがサンティ氏の444タクシー。法人タクシー
と個人タクシーはお互いに同じ無線協同組合に属していることもある。法人・個人を
別枠で考えてしまう日本と大きく異なる点である。日本でもが台数規制が無いために、
ヨーロッパで最もタクシー密度が濃いという街に。交通局は現状の市場の流れから台数
規制は不要と判断。タクシー事業者は1200台が適正台数であるという要請をしている
が、談合はできないので少し供給過剰になってきている。
⑶ タクシー乗務員の所得について
税金を引いた賃率は45%。確定申告で所得税等15%程度の税金を払うので賃率は日本と
それほど変わらない。タクシーに限らず、低所得者で収入1ヶ月分、高所得者で3ヶ月分
の税金が相場。(参考:タクシーにもかかる消費税は7.6%。EU加盟国と比べると低
い)タクシー乗務員で年間売上1000万円だとすると、450万円が年収となり、あえて
区分に分けると低所得者に属する。日本に比べて年金は多いので、高年齢で働く意欲は
日本よりは低い。
先般イタリアのタクシー組合がタクシー認可規制緩和反対のストライキを展開したが、めったにストライキをしないスイスでも、2005年、賃上げ及び「違法タクシー罰則・罰金強化に反対」するストライキがチューリッヒ空港専用タクシーの労働組合で1週間実施された。結果、労働組合側の要求はほとんど通らず、経営者側の勝利。
⑷ タクシー乗車とクレジットガードでの支払いについて
チューリッヒでは走行しているタクシーを止めて乗ることは危険なので禁じている。
よって、タクシーに「空車」等のウインドサインはない。駐車しているのが「空車」だ。
無線で呼ぶか、駐車しているタクシーに乗るかのどちらかである。
最近増えているのがクレジットガードでの支払い。チューリッヒのタクシー1470台の
月間売上におけるクレジットカードの使用割合は10%(約1億円)。タクシー会社は
2.5%~3%のコミッションをカード会社に支払う。444タクシーオリジナルのクレジット
カード、タクシークーポンの販売に力を入れている。
⑸ 実車率や事故について
空車を含めた稼動割合は昼75%、夜間が25%、市のタクシーの半数が無線営業。週末は
実車率50%を超える。平均乗車時間は10分~15分。個人タクシーは流し営業。地理が
簡単なので、GPSはほとんど付いていない。過去の配車歴の統計に基づく曜日・時間別
の配車可能時間を詳細に試算しているので、市内においては分単位での現着可能時間を
把握している。
タクシー事故は少ない。万が一、事故を起こして運転手が入院するような事態になって
も、共済組合などから収入の8割近くを保障される。ドライブレコーダーは全く普及して
いない。警察がタクシー運行管理全般を管轄。
⑹ 法人タクシー事業者の減少について
30台規模の法人タクシーは次々と個人タクシー化している。個人タクシーの営業許可には
3年間の乗務経験、ドイツ語会話能力、地理試験、交通局の試験合格が条件。労働時間は
1日9時間まで、週53時間以内。 休憩時間の規定あり。
⑺ 乗務員について
乗務員の平均年齢は45歳。中には学生アルバイトもいるが、若年齢の乗務員が減少して
いる。失業金や生活保護に頼る25歳以下の若者は増加の一方をたどっているにもかかわ
らず、である。65歳を過ぎると、5年に1回、眼の検査など厳しい医師の許可が必要。
最高齢は75歳で全体の5%が女性。乗務員の約半数が外国人で、その国籍数は60カ国。
日本国籍者が2名いる。スイスの上場会社100社で働く700人以上のマネージャーの国籍
の40%が外国人というデータ(欧州最高の数字)もあり、同じく国籍多様なニューヨーク
とは意味が異なる。スイスでは業種に関わらず国際色豊かであり、我々が試乗した
タクシーも毎回違った国籍の運転手だった。
⑻ 料金と福祉タクシーについて
チューリッヒ市局が設定するチューリッヒ全域におけるタクシー料金は、
初乗り:6.0 CHF 加算:1km 3.5 CHF 1時間の待ち料金:63 CHF
但し、注意すべきは約150m間隔でメーターが小刻みに上がること。それらを合算して
上記の料金になるようメーター調整をしており、停止あるいは走行が10km/時以下に
なった場合にも63 CHF / 時 相当の待ちメーター料金が発生する。
市が運営している20台の予約制障害者タクシー(車椅子をそのまま搭載可能)があり、
一般タクシーでも障害者手帳を見せると割引が受けられる。障害者割引による差額年間
約10億円は市が負担。乗車拒否は法律上禁止されており、訴えられると罰金約200 CHF
(昼勤務の1乗務の営収相当)。乗り合い行為・メーター不使用(交渉制)も禁止。
取材後に我々が乗車した、行き先・目的地が全く同じ2台のタクシー、1台は19 CHF、
もう1台24.5 CHFであった。他国での試乗調査で、「遠回り」は何回も経験済みだが、
決まった路線が無いタクシーならではのことなので、特に現地言葉ができない観光客は
困る。
⑼ タクシー営業車両の自家用使用について
10年前から車上の広告が許可されたが、広告料が安い上に、個人タクシーは
※営業外では自家用車として使っているので、あまり普及していない。
※タクシー車両の通勤使用は、これまで視察してきた国々と同様に何ら問題はない。
行灯やドアの表示はすべてマグネットで貼ってあり、その行灯とドア表示をはずせば、
自家用車と何ら変わりはない。
Mr. TAXI サンティ氏はドアの表示をはがしながら、「日本では営業車両と自家用車に
よるナンバープレートの違いがあるとのことだが、必要ない。」というコメントを
残した。
禁煙車の普及度は20%位。チューリヒ中央駅の地下ホームなどの全域禁煙場所での喫煙は25 CHFの罰金。
⑽ 燃料や車検制度について
燃料は95%がガソリン、5%がディーゼル。トヨタハイブリッド車が50台。ガソリン高騰により、ハイブリッド車導入をするタクシー業者が増えつつあるが、今のところ助成金は無い。ガソリンは1ℓ当たり1.68 CHF。メーターや運行記録計及びそれらの検査は法律で義務化されている。警察局の車検を初年度に1回、交通局の車検は2年目以降毎年1回。タクシーの後部ナンバープレートは一般車と同じで、白地に6桁の番号、スイス国旗と州の略称が刻印されている。
今回の取材先の詳細は 444社ホームページへ
スイスでは全国的に「タクシーは公共の乗物」という意識が薄く、国の公共設備投資も
まず路面電車(トラム)が優先であった。しかし、近年は「公共交通優先型都市交通政策」
を推進しており、タクシーは準公共交通機関と位置づけられている。特にローザンヌでは
タクシーがトラム路線を通行できるばかりではなく、タクシーのみ進入可能な区域も設けて
おり、スイスで最もタクシー政策が発達している都市といえよう。
おわりに、今回の視察、各都市で度々乗った路面電車トラムについて。トラムは都市部
では完全に市民の足となっている。人よりも優先される??ので、線路を渡るときなどは
歩行者の方が注意をしなければならない。2004年には26人の歩行者がトラムと衝突して怪我
を負い、死者が3人。街のいたるところにトラム専用自動販売機があり、車両は2分単位で
運行している。あまりにも乗り降りが激しく、係員も切符のチェックのしようがないが、
タダ乗りは80 CHFの罰金。タクシー業界としては、トラムの便利さや料金にはとても及ば
ないので、タクシーならではの便利さを活かしたサービスを展開したいという姿勢だが、
トラムが通行する路線道路(バスは通行可能だが、一般乗用車は通行禁止が多い)のタクシ
ー全面解禁、つまりバスと同等の扱いをしてもらいたいということを主張している。
我々視察団のような多人数だと通常のタクシーでは分散化して困ることがよくあったが、
今回初めて変わった大型タクシー(荷物コンテナを牽引する)を利用した。ユニークな電気
自動車タクシー、法人・個人タクシーの協同無線など、「国が変われば発想は変わる」、
来年100周年を迎えるスイスのタクシーの動向にこれからも注目したい。
この報告書を書き終える頃、9月末の日曜日は、チューリッヒの町の中心部が歩行者天国と
なる。ヨーロッパの1500の都市で行われる、「町へ行こう!マイカーを使わずに」という
キャンペーンにちなんでのイベントだ。歩行者天国となるだけではなく、町のいたるところ
で50近いさまざまな催し物が開かれるらしい。

晴天のアテネ空港
ギリシャ国旗のごとく白と青が最も似合う国。飛行機の窓から見下ろす紺碧の海、抜けるよう
な青い空、アテネ空港に我々KUK一団は降り立った。
1F数箇所の出口には50mほどタクシーがずらりと2列に並ぶ。
すべて黄色だがニューヨークに比べると黄色の色は浅い。
また、ドア上部からぐるりと一周たすきをかけたような青い色が入っている。
2Fの入国ゲート前から降りてくるタクシーはなぜか白色が多く、同じく青いたすきをかけた
ような青い線が入っている。空港を警備するパトカーも青い線が入った青いサイレン。
我々はアテネから300km以上離れた都市、ギリシャ正教の聖地メテオラへ向かう。
空港からアテネ中心部を避けながら、郊外を抜けるまでは、オリンピック時に完成した
トラムという未来型の路面電車と平行して走る。
ETC完備の郊外料金所までの約20分は7ユーロ=950円ほど。
料金所を過ぎると信号や十字路がなく、東西の幹線道路もほとんどない。
一直線に延々と伸びる国道を北上する。
各地方のタクシー
世界遺産メテオラ町には宿が無いので、隣町のカランバカに泊まる。
人口10,000人ほどのカランバカにはタクシー乗場が中心広場に1つだけ。
無線か電話での営業が中心、メテオラへの観光タクシーがある。
片道所要15分、運賃交渉にて10ユーロ=1,370円。1時間の貸切20ユーロ前後=2,740円。
(以降1ユーロは全て137円で計算する)もちろん交渉して決める。
ある時、ゼウス神が怒り狂って天界から投げつけたといわれる巨大岩石群、
それらの頂上に建立された修道院で中世に逆戻りした錯覚にとらわれながら、
我々はギリシャ正教の知識を深めることができた。
翌日は再びアテネ方面に南下し、古代ギリシャ宗教の中心地デルフィに向かう。
オリーブの木、綿花、穀物、ナッツ、ピスタチオやタバコなど日本では見られない
風景が途切れることなく続く。
2Fや3F部分の基礎工事が未完成の家が多いのは娘婿の結婚時に建て増しするため。
余談だが農業関係や建築現場の労働者のほとんどがアルバニア人、
家政婦にはフィリピン人が多いらしい。
メテオラから4時間余り、デルフィ町に到着。メテオラと同規模の町でタクシーの営業形態
はメテオラと同じ。冬はスキー客で賑わう。町から35kmのギリシャ政府観光直営スキー場
へは15ユーロ=2,000円ぐらいから交渉する。
タクシー乗場は町に2つ。アポロンの神殿、宝物庫、古代競技場などの見事な石造建築物の数々は南米ペルーの空中都市マチュピチュを連想させる。
さらに南下し、かつて黄金文明と呼ばれ、トロイヤ文明を滅ぼしたミケーネ文明の遺跡群
へ向かう。そして、古代ギリシャの英雄アガメムノンの巨大な墓にお参りした後、
隣の港町ナフプリオンへ。
町の規模やタクシー営業形態はやはりこれまで訪れた町と同じだが、この町は周辺の遺跡
や島々へのアクセスがよく、何より現代人が演ずる古代劇を生で観賞することができる
エピダブロスの劇場が近いとあって観光客で年中賑わう。我々はさっそくタクシーで
町を周遊する。
地方でのタクシーの色は各地方で統一されている。この町では赤ワイン色で統一。
ナンバープレートは黄色が認可の印。観光客が多く、交渉運賃でのトラブルを避ける
ためにタクシーは全てメーター制、無線付のベンツが多い。ドア全面にゴルフ場の広告を
ペイントしたタクシーもある。メーター料金に加算される迎車2ユーロ=270円などは
交渉してまけてもらえる。
数台のタクシーへの試乗結果、いずれのタクシーのメーターも非常に小刻みに加算した。
(運賃設定は後のアテネ市の項を参照)領収書はロール紙プリンター式で非常に細かく印字
される。領収書の感熱紙は横3cm、縦15cmもある。ギシシャ人の夜は長く、特にナフプリ
オンは深夜2、3時でもタベルナ(居酒屋)に人が集まる。
アテネに到着・乗車拒否の連続
ナフプリオンの近くにはさらにコリントスという港町がある。周辺には古代ギリシャ商人で
栄えたコリントス遺跡があるが、この町は何と言ってもイタリアからエーゲ海を直線的に結ぶ
壮大なコリントス運河が有名である。
運河を通過する船舶が展望できる橋にはタクシー乗場が設置され、シルバー色のトヨタや
ベンツが客待ちしていた。街灯などにラジオタクシーの会社の宣伝がいくつか見られた。
コリントスからアテネにつながる幹線道路に入る際に渡った橋は日本が技術を提供したもの
で、明石大橋に良く似ていた。
明石大橋の半分ぐらいの長さだが通行料10ユーロ=1,370円。歩行者は無料。
いよいよアテネ市まで60kmぐらいの所に来た。車線は徐々に広がり、交通量も増えてきた
ようだ。アテネ市の中心部へは自家用車の乗り入れを奇数日は下一桁の車番が奇数の車両のみ
(偶数同じ)と制限している。抜き打ちでたまに取り締まる程度なので、この日は取り締まり
現場を見ることはできなかった。違反者には多額の罰金があるらしい。ナンバープレートを
2枚所持して付け替えるなどして対応している者が多く政策の見直しが必要。
夕日が沈むパルテノン神殿を見ながら、市の中心シンタグマ(憲法)広場に辿り着いた。
ここで流しのタクシー試乗調査をするが、行き先が近いため数台続けて乗車を拒否される。
ギリシャでは腕を横に広げ指1本を出して乗車意思を示す。しかたなく広場の片隅で客引きす
るタクシーに乗車しようと試みるが近距離では乗せてくれないようだ。「その距離で向かう
のは難しい。ただし、観光で周遊するなら私に任せてくれ」と言って名刺をくれる運転手まで
いた。わざと遠方の行き先を告げてから、途中で目的地を変更することも考えたが、結局は
広場からほど近いところでタクシー乗場の看板を見つけてそこで乗車する。メーター運賃通常
3ユーロ=410円の距離で、10ユーロ=1,370円を支払うはめになった。後で分かったことだが
、かなり遠回りされてしまった。年間で1,500万人が訪れる観光国ギリシャのタクシー運転手
は、観光客に悪い印象を与えることなど全くお構いなしのようだ。
アテネのタクシー運賃と物価について
EU諸国で最も安いギリシャのタクシー運賃は次のとおり。
◎ 初乗0.85ユーロ=115円(乗込後即加算)
◎ 加算1km0.30ユーロ=40円、郊外での加算は1km0.56ユーロ=77円
※港町ナフプリオンで試乗したタクシーは100m0.3ユーロぐらい
◎ 夜間の加算は市内・郊外ともに1km0.56ユーロ=77円
◎ 待機運賃1時間7ユーロ=960円
◎ 空港の送迎は3.00ユーロ=410円の追加運賃
◎ 海港や鉄道駅の送迎は0.80ユーロ=110円の追加運賃
◎ 無線配車料金は1.50ユーロ=205円の追加運賃
◎ 無線配車時間指定料金は2.50ユーロ=343円の追加運賃
◎ 10Kg超える荷物1個につき0.80ユーロ=110円の追加運賃
◎ タクシーのミニマムチャージ(乗ってすぐ降りても支払う最低運賃)が市内で1.75ユーロ
=240円、郊外で2.00ユーロ=274円
通常タクシーでチップを渡す習慣はない(クリスマスなどの祝日を除く)ためか釣銭用の
ユーロセントはどの運転手も用意していた。定額運賃や遠距離割引は無い。遠距離の場合は
運賃を交渉して決める。アテネから550km離れたテッサロニキ市まではあるタクシー運転手
に聞くと、300ユーロ=41,000円ぐらいとのこと。ちなみにミニマムチャージの240円で買う
ことができる物は、日本で買えるものと同じような物である。食品・衣料を除けば日本と同じ
物価とみてよい。19%の消費税もかかる。ギリシャではユーロ通貨変更に伴う便乗値上げで、
物価は高騰しているが、タクシーは他の物価に比べて格段に安い。特に加算運賃が安い。多く
のタクシーはディーゼルを燃料とするが、1ℓでちょうど1ユーロ=137円、かなり高い。
参考までにガソリンは1ℓ=1.15ユーロでハイオクは1.3ユーロ。
ギリシャ流相乗り
助手席前のダッシュボードに満車(賃走)のサインが、やや見づらいが付いている。寝かせ
ていると空車で、札を立てると満車という簡単なものである。しかし、ギリシャでは1人で
乗った時など、賃走に変更する運転手はまずいない。行き先が同じ方向であれば、先客がいて
も相乗りすることができるからである。ある程度メーター運賃が進んでいるタクシーに乗車し
た時は「この今のメーター運賃を覚えといて」などと言われ、運転手・乗客ともに頭脳メータ
ーを使って乗降車の運賃差額を覚えおかなければならない。車載メーターを改造して2、3人の
行き先の異なる乗客に対応する進化したタクシーも存在する。朝夕のラッシュ時にタクシーに
乗ると頻繁に相乗りすることになるが、この相乗りは法律で一応禁止されている。
島巡りで見たタクシー
ギリシャには2,000もの島があり、我々はそのうちサロニコス諸島の3つの島を巡るツアーに
参加した。それぞれ3,000人から15,000人が住む島であるが、フェリーの発着地、発着時間に
は必ず数台のタクシーが並ぶ。車体は白色が多い。ナンバープレートは認可の印である黄色。
これまで見てきた地方のタクシーのナンバープレートも全て黄色だった。車番は「TAA-
5555」などタクシーは必ずTAXIのTAで始まり、それに続くアルファベットで地域を表す。
アテネではTAAとTABしかなく、そのAとBは車両年式で分けている。
島を1時間で1周するのに30ユーロ=4,100円を提示されたが、交渉して25ユーロ=3420円
となった。メーターは付いていたが、下の方にラジオと一体化して隠れて付いているので、
乗ってすぐにはメーターが付いているのに気が付かない。ロバのタクシーや馬車タクシーも
ある。島々を巡る高速艇はあるが、ニューヨークのようなウォータータクシー(海上タクシー
)のようなものは無かった。
タクシー協会書記長とタクシー業界誌編集長との対談
私たちはタクシー業界の実情を調べるため、ギリシャ唯一のタクシー業界誌「タクシーマガ
ジン」の編集長アントニス・ストウザス氏とともに、アテネ・タクシー協会に向かった。会長
があいにく出張で不在のため、書記長兼会長秘書のコスタス・ディモス氏へのインタビュー。
まずはタクシー業界全般、事業者・運転手の資格や条件について聞いてみた。
アテネ市で事業者になるには、交通省が事業認可を受け付けないため、売却希望事業者と
交渉して事業権利を購入する。法定価格は12万ユーロ=1,600万円であり、地方に行くと幾分
安くなる。2つ、3つと購入して人に貸すこともできる。ギリシャの海運王オナシスであれば
話は別だが、個人で複数の事業権利を持つ者は多くても3つである。
事業者は半年ごとの車両検査やメーター検査が義務付けられている。検査の度にメーター
に封印をするが、私が試乗した時の感覚ではメーターの上がり具合が運賃表に比べて異常に
早いものがあった。車両検査にはもちろん排出ガスの検査も含まれる。
事業者には国から「アディア(認可証)」が発行されるので、運転手は車内に携帯が義務付
けられているこの許可証を、乗客の要望があれば提示しなければならない。また、事業者証明
ステッカーのフロントガラス貼り付けも全ギリシャにて義務付けられている。このステッカー
は交通局の携帯端末読取機によって、車外からでも本物かどうかを確認できる。今年の9月1日
からこのステッカーの無いもの、偽造などは事業者権利を剥奪される法律が施行された。
また、事業者は年間1,500ユーロ=20万5,000円ほどの認可更新費を運輸局に支払う。
この中には車両や燃料にかかる複雑な税金を、運輸局が変わりに一本化して交通省に収める
費用が含まれる。さらに、事業者は協会にわずかであるが、月1~1.5ユーロ=200円の会員費
を支払う。
その他、今年から領収書がプリンター印字から手書きに変更になった。ただし、地方では
プリンター印字のままである。印字される内容は加算運賃内容が詳細に表示されるものであっ
たので、なぜ手書きに変更したのかは不明。
運転手になるには、運行管理の難しい試験の合格などの条件があり、世界で最も難しい言語
の1つといわれるギリシャ語に堪能でなければならない。2種免許取得後は、1日単位で車両を
借りて営業する。事業者(車両オーナー)への支払いは車種や年式によって違うが、1日35ユ
ーロ=4,800円前後、燃料は1日約25ユーロ=3,430円。1日の水揚は12時間乗っても平均150ユ
ーロ=20,550円ぐらい。運転手の手元に残るのは12,000円ぐらいなので、生活は厳しい。
月単位で車を借りて営業する運転手もいる。
日本でいう労働基準監督署がギリシャにもあるが、タクシー運転手の労働時間だけは監督で
きないようだ。定年退職60歳は日本と同じだが、ギリシャの場合は定年後、嘱託としてでも
仕事に就けない。女性運転手は全体の1%程度。
去年のオリンピック開催前に政府の援助があったので車両は新車のベンツ(Eクラス)が
一番多く、順にSKODA、OPEL、TOYOTA、PEUGEOTと続く。国産車は製造していないので、全て
輸入車。アテネ市では車体とナンバープレートは黄色と指定されている。アテネではタクシー
の他、トロリーバスや郵便ポスト、公衆電話など公共的なものは黄色である。ラジオ(無線)
タクシーは2,000台のグループやその他のグループがあり、盛んに営業している。広告は車内
の一部のみ認められている。(地方では車外ドアも可)。制服みたいなものはなく、サングラ
スも日差しが強いためか認められているようだ。
規制緩和への動きは今のところないが、アテネのタクシー関係者は一様に規制緩和に反対し
ている。「運転手の明日が見えない」、「交通状況が悪化する」などの多くの反対意見を聞い
た。タクシー協会や組合では増車しないよう交通省に圧力をかけつつも、運賃値上げや、納税
の簡略化を求めて昨年3日間ストライキを行った。
交通省の旅客課長との対談
私たちはタクシー規制の実情を調べるために早朝アテネ市運輸局に向かった。ギリシャ
の官公庁は朝7:00過ぎに始まり、14:00前には仕事を終えて帰ってしまう。旅客課長のMS
.ソモプール氏に話を伺う。アテネ市運輸局が管轄するタクシーの数は近郊のピレウス市
(大阪市と尼崎市の位置関係)を含めて15,000台である。人口は両市で450万人、全ギリシャ
人口の半分近くがアテネ首都圏に集中している。アテネ市民は2,3ブロックでもタクシーに
乗る習慣があり、タクシーは市民の重要な移動手段である。
まずタクシーは国で総量規制されており、ここ3年間アテネ市のタクシーは増車認可されて
おらず、今後当分の間は増車しないとのこと。他の交通機関の発達により、ますます供給過多
の状況が続いている。運賃についても規制されている。今年もタクシー協会から値上げの申請
は受理しているが、昨年3.5%値上げしたばかりだし、一応検討するがしばらく値上げはしな
いとのこと。タクシー運賃の低廉化は運転手のマナー低下につながるが、ギリシャでは日本
ほどサービス面を重視しないので、顧客の満足を得るにはまず運賃の安さであるということだ
ろう。局の苦情係によると手紙による苦情が多いとのことで、悪質なものは運転手または事業
者を呼び出して罰金や業務停止命令を出す。
排出ガスによる深刻な大気汚染
ヨーロッパでは定期的にタクシーセミナーが開催され、各国が問題点について議論しあう。
最近のギリシャのテーマは、イタリアなどで認められるバスレーンのタクシー通行をなぜギリ
シャで認めていないのかというものであった。次回は今年10月21日から3日間初めてアテネ市
で開催される。毎回話題になるのが、欧州全体で取り組んでいるエコ・ディーゼルや新燃料開
発である。アテネ市では大理石の古代遺跡が排ガスによって真っ黒になってしまったという。
最近30年での大気汚染は30年前から紀元前までの間よりもひどいらしい。オリンピック前にす
べてきれいにしたので、現在のところ本来の色を取り戻している。また、路上駐車があまりに
も多いために、慢性的な交通渋滞が発生していることも問題の1つである。公共駐車場がほと
んどない、取締りが少ない、知人の警察官の名前を言えば違反のキップを切られないことが
原因である。
1週間かけて各地方都市を慌しく駆け巡ったが、ギリシャ人はしたたかでコンプライアン
ス(法令遵守)に従わない国民性のようであるという印象を受けた。陽気なラテン民族の性格
も併せ持つが、初対面の相手にはあまり本音を言わず、まず相手のことを知ってから自分の本
音を言い始めるようだ。今回のインタビューでも日本や大阪のタクシー事情について再三質問
を受けたので、これまでKUKで訪問した各国のタクシー事情を交えながら、現在の大阪の供
給過多で多様な運賃を説明した。
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コルドバはマドリッドから新幹線で約1時間半ほどの人口31万人の町である。
マドリッドに夜到着した翌朝なので特に日差しが眩しく感じられる。中心街から10分ほど
のところにある鉄道駅からタクシーに乗り、やや中心街から離れた広場まで12∈であった。
道はきれいだが工事中で一方通行のところも多く、途中で回り道しなければ8∈ぐらいが相場
と思われた。コルドバのタクシーは白地に、CAJA SUL という銀行名が車体後部に目立
つように書かれている。
給料を運転手に聞いたところ笑ってごまかされたが、特に不満げな様子は見受けられな
かった。運転手は12分間の乗車時間のうち少なくとも2~3分は無線でそれほど急を要する
とは思えない話に夢中だった。
コルドバでのタクシー開業権利料相場は約900万円だが、この運転手の話では車両代
は含まれていないらしい。「コルドバには350台余りのタクシーが走っとる。
車両は余ってるのでねえか、つまり必要最低限のタクシー運転手がもうすでにコルドバには
いるんじゃ」という内容の話を、語尾を省略する、素朴な印象を受けるアンダルシア訛り
(日本でいう東北弁)で話してくれた。
メスキータと呼ばれるイスラム寺院は1度見ると印象に残り忘れられない。パティオ
(中庭)や白い家々に囲まれた路地が美し